精神衛生講座 第5回「循環気質」

精神衛生講座: 第5回「循環器質」

 すでに、執着性格、強迫性格、分裂気質、ヒステリー性格の話をしてきました。今回は「循環気質」についてお話します。
 循環気質(cyclothymia)は躁うつ気質とも言われます。講談社の精神医学大辞典によると、「その特徴は、①社交的、善良、親切、暖たかみがある。②明朗、ユーモアがある、活発。③寡黙、平静、気が重い、柔和。このうち①は循環気質の人すべてに共通する性格で、明るく開放的で子供のような無邪気さがあり、誰からも愛される人柄である。逆に言うと、人を冷たく拒絶することが出来ない性格である。②は気分が高揚して、次々にアイデアがわきあがり、活動的である。③は逆に丸みのある、重厚で、穏やかな性格である。②と③はいろいろな程度で混じりあっている」と書かれています。

 わかりやすく言うと、循環気質の人は、明るく社交的で、世話好きで友達も多い。現実的で常識的に行動し、考え方も柔軟です。また、いろいろなことに関心を持ち、仕事も手際よく片付けることが出来ますので、社会的には周囲から高い評価を受けることが多く、仕事面ではかなりの役職にまで出世している人が多いようです。お祭り騒ぎや選挙などになると、血湧き肉踊る人でもあり、また、頼まれると断われない人というより、乗ってしまってやりすぎるというか、夢中になってやるということがよく見られます。これは長所でもあり欠点でもあります。この性格の人は、面倒見のよい誰にも好かれる人ですが、裏を返せば、調子に乗りやすい、人の情けに大いに共感してお節介を焼きすぎるという欠点もあると言えるでしょう。
 もうお解りのように、循環気質に親和性のある疾患は、躁うつ病(英語圏では循環病、感情障害、気分障害)です。しかし、日本人には循環気質の人は少なく、従って躁うつ病の人も少ないようです。躁鬱病という病名は今日あまり使われなくなり、双極性気分障害と呼ばれています。
 参考までに、一般に言われる「うつ病」と、この「躁うつ病(双極性気分障害)」は全く別の病気であります。お間違いにならないで下さいね。