統合失調症のお話

統合失調症とは
 かつては精神分裂病と言われた病気です。しかし、癌と言われても多種多様な癌があり、そのステージも軽症から重症までいろいろであるのと同様に、いろいろな状態を包括した病名である。一般的には重症の人を連想される方が多く、誤解される恐れが大きいので、統合失調症という病名告知は早期には出来ないことが多いです。病状が落ち着き、説明が冷静に聞いていただける状態になって、尚且つ、主治医との信頼関係ができあがっている時期になれば病名告知をするようにしています。

1)統合失調症の分類と症状
 現在はアメリカ式の診断基準を使うことが一般的ですが、古い分類の方が疾患概念が解りやすいので、あえて古い分類を使って説明します。
 ①妄想型;幻覚や妄想(陽性症状と言います)が主で、それ以外は奇異な言動がない状態の人です。幻覚や妄想に関してはおかしな言動は出てきますが、表情もよく、会話も普通に出来ます。ほぼ問題なく日常生活も送れているケースもあります。後に述べる陰性症状のない人を言います。このタイプの人は服薬により容易に改善します。

 ②緊張型;気持ちの緊張だけではなく身体の緊張も強く、こわばりや話しかけても返事が出来ないこともあります。興奮して騒がれる時もあります。近年、緊張型の患者さんはほとんどいなくなりました。

 ③破瓜型;幻覚・妄想など陽性症状のある人もいますが、薬物療法で陽性症状が消えた後に陰性症状が残る人を言います。また、陽性症状が全くなくて陰性症状だけで始まる人もいます。陰性症状とは、引き籠もり、無為な生活、生産的活動はなく、表情も硬く、人と関わりたがらない、人付き合いもほとんどしないなどです。本来元気であれば働くはずの機能が失われているので「陰性症状」と呼びます。陰性症状は薬物療法で改善しにくいことが多く、治療は長期化することが多いです。 

2)統合失調症の治療
①陽性症状の多い急性期;薬物療法で容易に改善することが多いです。程度によりますが、就労も結婚生活も普通に出来ている人もいます。薬をやめてしまうと再燃する人もいますので、少量の薬を維持量服薬する必要があります。
 
 ②陰性症状が主の状態;やはり薬物療法をしますが、陰性症状は陽性症状が改善するように容易には改善しません。元々、人付き合いの苦手な性格の人が多いので、陰性症状を残したまま社会適応を模索することも多くあります。いきなり社会参加できない人もいて、集団生活に慣れるために、精神科デイケアや作業所を利用することもあります。社会復帰という意味では、破瓜型の統合失調症の陰性症状が残る人は改善しにくいタイプと言えます。

3)統合失調症の原因
  原因はよく判っていません。従って多くの学者が様々な学説を述べています。
ここでは私の持論を書きます。破瓜型の人は元々の性格がschizoidと言われるもので、「人と関わることよりも、一人で自然の中にいる方が好き」というタイプの性格です。面接して判ることは多くの破瓜型の患者には「強い人間不信というより対人恐怖がある」と考えています。そのような性格の人が仕事に就いたり、学校に入ったりして集団活動を余儀なくされますと、日々集団の中にいることが苦痛で、「社会的引き籠もり」という症状(陰性症状)が現れるように感じます。社会的引き籠もりが出来ない時には陽性症状(幻覚や妄想など)を出して、現実から逃れようとしているように思います。精神科医との面談も彼らにとっては苦痛なものになります。家族などがカウンセリングを求められることがありますが、心に深く立ち入る面接は破瓜型の統合失調症の人では病状を悪化させる可能性があります。カウンセリングなど深く心に立ち入る面接では距離感を考えて面接すべきものと考えます。