「子供の不登校と大人の出勤拒否」のお話

「子供の不登校と大人の出勤拒否」のお話

①子供の不登校と大人の出勤拒否の成り立ちは同じです。
 不登校の子供さんのことがよく話題になります。子供なりに何かストレスが溜まり我慢して登校しています。やがてそれが限界にきて赤信号がつきます。学校に行けないという現象は赤信号なのです。大人も仕事に行けなくなり、同じように出勤拒否症になります。

②不登校は状態像で、単一疾患ではない。
 不登校は「学校に行けない」という状態を総称しているのであって、一つの病気ではありません。
 朝になると頭痛、下痢、動悸など身体症状が起こる子供、朝に体がきつい、起きれない、気分がすぐれないなど気持の不調が起こる子供がいます。このように身体や気持ちの症状のために「学校に行けない」と感じるものは神経症といわれる病気になっているでしょう。一方には「行きたくないから」とはっきり言う子供もいて、この場合は病気というより、不適応状態になっていると言えそうです。理由が「解らない」と言う子供も居ますが、この場合は神経症か精神病になっている可能性があります。

③原因探しの共同作業が治療です。
 いろいろな原因があるようです。多い原因は「友達がいない」という子供です。「先生が嫌い」「成績が下がった」と言う子供も居ます。原因を整理していくと、対人関係が上手でない性格でうまく仲間が作れなかったり、プライドが高い子供は、成績や運動などで他の子供に劣ると感じた時、そこに居ることに耐えられなかったりします。新聞などでよく話題になる「いじめ」が不登校の原因となることは少ないようです。つまり、原因は周囲にある場合より、本人の性格や対人関係にある場合が多いと感じます。
 学校に行けなくなっている場合でも原因が家庭にあることがあります。両親の不和、十分にサポートされていない子供では、学校に行けなくなっている場合があります。低学年の不登校は家庭内の問題が要因であることが多いと思います。
 「行きたくない」と言う子供の場合、「何故行きたくないの」といきなり話を進められるので、対策は立てやすい。一方、身体症状や気持ちの症状を出して、学校に「行けない」と言っている場合は、「原因は判らない」と言われることが多い。何が症状を起こさせているかを探すことから始めるので、面接治療は長くかかります。
 原因が判ったところで、環境調整が必要となります。周囲の協力が得られないと難航します。その過程で不安や不眠、抑うつ感がある場合は薬物療法も行います。

④大人の「出勤できない病」も不登校と同じです。
 大人の場合も「仕事に行きたくない」と自覚している方もいますが、身体症状やうつなどの精神症状を訴える方も多いのです。子供と同じで、仕事や家庭内の我慢の原因を探し対策を立てることが治療となります。

⑤原因の整理から始め、性格的問題も明らかにしながら、対策を考えるということが大事な治療作業となります。薬だけ飲んでいたら治るというものではないのです。大人も子供も頑張って原因探しをしましょうね。