発達障害のお話

発達障害のお話

1)言葉の定義
 日本の医学教育の場ではAPA(米国精神科協会)が出す診断基準(DSM)が使われている。1980年に発行されたDSM3では発達障害という診断名は存在しない。1988年に発行されたDSM4で広汎性発達障害(自閉症性障害を含む)とADHD(注意欠陥多動症)という病名が初めて登場した。しかし、2013年に改訂されたDSM5では発達障害という名称は消え、ADHDとASD(自閉症スペクトラム)という二つの病名に集約されている。
厚労省関係の書類では、診断名は WHO(世界保健機構)が出す診断基準(ICD10)が使われている。ICD10では広汎性発達障害(小児自閉症を含む)と多動性障害と行為障害(ADHDに相当)という分類が使われている。

2)診断の難しさ
 発達障害の説明は中々難しいですね。疾患の定義が曖昧であるうえ、不適応を起こすという点では類似している。自閉症性障害と注意欠陥多動症が合併していることも多く、クリアに区別できないことも多い。
ザックリと区分すれば、「ASDなど広汎性発達障害はコミュニケーションあり方の障害(コミュニケーションの質的異常)で、不適応を起こすもの。ADHDは注意欠陥や多動性という性格特性によりコミュニケーション障害を起こり、その結果不適応を起こすもの」と言えるでしょうか。いずれも結果としてコミュニケーション障害を起こし、社会的には適応障害を起こすので類似しています。

3)診断に使われる検査
 境界がクリアでない+疾患定義もクリアでない→正確に識別できる検査はまだない。
補助的に使われている検査はいくつかはありますが、それで診断が確定するものでもない。

4)治療
治療は環境調整と薬物療法となります。
a)環境調整
ASDでは人とのコミュニケーションがとれな人が多い。知的には高い人も多く、特殊な才能を持っている人もいます。これらが生かせるような環境を整えることで適応できる人もいます。
 ADHDの人は場が読めなかったり、うっかりミスや忘れ物などは多く見られる。これらの性格特性はあまり変わらないので、周囲の人が理解して適した仕事や環境を提供してあげることが必要となります。

b)薬物療法
 ①対人関係のトラブルや適応障害を起こすことが多い。うつ状態、パニック等には薬物療法(抗不安剤、抗うつ剤など)が有益です。対人関係のトラブル等では前記のように環境調整が必要です。
 ②ADHDの薬物療法;
  インチュニブ、ストラテラ、コンサータ等の薬剤により落ち着きが出たり、集中力が出たりすることが期待できます。試しに使ってみる価値はありそうです。