精神衛生講座:第8回「病気の発病と治療」

精神衛生講座:第8回「病気の発病と治療」
  今回は心の病の発病の意味と治療について考えてみましょう。

①双極性感情障害(躁うつ病)や認知症を除けば、必ずストレス性の原因がある。
 心の病気には、ごく一部の例外を除いて必ず原因があります。「病気が原因」と思っておられる方も多いようですが、病気はストレスが限界に来たときの結果なのです。躁状態とうつ状態を繰り返す双極性感情障害も発病のきっかけとなる要因がありますが、病気が先にある例外的な病気と考えています。認知症は脳の病気ですので、心の病気ではありません。 

②ストレスは自覚されないことも多い。
仕事に悩み、家庭の悩みなど、何かの負荷がかかっているときは、容易にストレスと自覚できます。しかし、嫁姑問題とか、会社の上司に気を遣うとかの場合、それが日常的なことで負荷がかかっていると自覚されていないこともあります。また、高齢者に多いのですが、暇が沢山あってもすることがなく、うつ状態になる人もいます。これは「負ストレス」で、この場合のうつ状態は「目標喪失うつ病」と言います。

③発病は限界が来たときに点る赤信号。
 発病は前に書いたようなストレスが限界に来たときに赤信号として点ります。病気が始まる以前に何があったのか、また症状が悪化したときにも何があったのか、何に耐えて生きていたかを考えると原因が見えてきます。

④治療は薬物療法等をしながら、その原因を探すことから始まる。
 環境的原因の中で片付く悩み事は出来るだけ解決しましょう。片付かない環境の場合、少しでも苦しさが減るよう対応を考えたり、時にはその環境から逃げることも必要です。原因を考えるときに自分を取り巻く環境的原因だけではなく、自分の性格的特性も考察する必要があります。例えば、対人関係が下手な人、言語表現が苦手な人、周囲に気を遣う性格の人、完全主義の人などは、同じ環境の中でも受け取るストレスは大きくなります。性格ですから大きくは変えられませんが、何某かの生活の工夫が必要となります。

⑤原因が分かっても解決しない問題もある。
この場合はこの現実の中でどう生き、どう付き合っていくかを工夫することになります。
いずれにしても原因探しの作業は患者さんと面接者との「共同作業」です。面接者任せでは何も解決しないので、一緒に考えてくださることが必要です。一緒に頑張りましょう。