「高齢者のうつ病は薬物療法だけでは治らない」

「高齢者のうつ病は薬物療法だけでは治らない」
 高齢者のうつ病も増えている。内科医もうつ病に気付いて抗うつ剤を出される時代となった。しかし、なかなか改善しない。薬を増やせば転倒などが起こりやすいので、苦労するのである。今回の交流会の記念講演のテーマが「納得の老後」という話題なので、「納得出来ない生き方の高齢者」がうつ病になると考えてよいのでしょう。
 日常診療で出会う高齢者のうつ病の原因について、お話ししたいと思う。おおざっぱに言えば、時間を持て余しすることがない人か、夫婦二人だけの生活が苦痛になっているかのいずれかであることが多い。

うつ病の原因
1)原因が自覚されていない場合(目標喪失)。
➀高齢を理由に仕事や趣味をやめることがある。仕事一筋の生き方をしてきた人が、定年や高齢を理由に仕事を辞めるとうつ状態になる人が多い。せっかく手に入った自由な時間を楽しく使えない人が多い。仕事という目標の喪失である。

➁子育てに頑張ってきた人は子供の入学、就職、結婚式などが終わるとすることがなくなる(子供の自立)。これも生き甲斐の喪失である。
 ➀➁いずれの場合も暇がありすぎて、引き籠もり生活となる。新たな目標を見つけ出す必要があり、それが治療となる。

③高齢になるので配偶者や親友、頼っていた人が他界することも多くなる。
依存対象の喪失である。これは代わる依存対象が手に入らないことが多いので、暇な時間を紛らわせるメニューが必要で、主治医はお話し相手を続けることが多い。

2)家庭内の現実的悩みが継続してある場合。
 夫婦のもめごと、家庭内のもめごと、経済的不安(借金)など・・これらは高齢者でなくてもうつ病になる原因である。
高齢者に比較的多く見られるのは、夫が定年退職し、終日家に居ることになったために、妻が自由に行動できなくなったり、生活上の細かいことに夫が口出しするため妻のストレスが増したりという例が多く見られる。夫婦同席で受診されると、この話題が話せないことがある。それらしい話が出て来そうなときは配偶者を退席させて話を伺う必要がある。
夫婦間の調整か、それぞれが外に楽しみを見つけるかして、接点を減らす工夫などが必要となる。

3)身体機能の低下がうつ病の原因となる場合。
 身体各所の老化(足腰が悪い、体力低下、視力や聴力の低下など)や重たい身体病、認知症の出現などの場合でも、今まで出来ていた趣味・遊びや家事が出来なくなり、引き籠もりとなる。楽しみの喪失である。
これらの身体状況と付き合いながらこの身体で出来る目標を探すことが治療になる。

4)性格的問題も一因になる。
➀何でも気になるという心配性の性格の人は、暇になると身体の不調(病気)探しをすることが多いのである。
➁本音が出せない+自己主張が出来ないという性格の人は我慢する生活が続く。
③人付き合いが苦手な人は、一人遊びが出来なければほとんどが引き籠もります。
いずれの場合もうつ状態となりやすい。
 
高齢者うつ病の治療
いろいろな原因で起こるので、患者の原因が何であるかを見つけ出すことが治療で一番必要なこととなります。抗うつ剤や睡眠剤も使いますが、転倒防止のため極力少量としたいものです。